京都大学井上教授事件
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神戸大学大学院法学研究科の阿部泰隆教授が、今回の井上教授の裁判について編集・執筆された本が、6月25日に出版されました。タイトルは、”京都大学井上教授事件―任期制法悪用からの正義の回復を目指してー“で、出版社は、信山社(東京;電話 03-3818-1099)です。正義感溢れる素晴らしい力作ですし、今回の裁判の実体と全貌、すなわち、任期制法の悪用の実態が見事に解明されています。教官の任期制法に関するバイブル的な著書として、歴史に残ることになるでしょう。井上事件を勝訴に導くための理論的な支えとなるだけではなく、任期制の不当な波及によるこの国の学問の自由の喪失を防ぐ大きな役割を果たすものと思います。 具体的な内容は既にネットでご紹介しているところが多いですが、それを編集し直し、さらに、加筆修正を加え、体系的に整理しています。是非、ご一読をいただければ、幸甚に存じます。 さて、今回の裁判に関しまして、皆様方の数々の暖かいご配慮、ご支援を賜り、 心から感謝いたしております。 本年の4月に、まず、京都大学総長の尾池和夫先生が、京都地裁の判決に対して否定的声明を発表され、続いて、京都大学教職員組合の教官部会が、京都大学再生医科学研究所の非人道的な対応に対する強い非難声明、及び、京都地裁の判決に対する強い批判声明を出しました。これが、良識ある京都大学の大多数の教官の偽りの無い気持ちです。京都大学のみならず、わが国の良識ある大多数の教官の気持ちも全く同じと思います。京都地裁の判決は、その結論もそうですが、判決内容の論理構成も矛盾だらけで、極めてレベルの低いお粗末なものでした。大阪高裁で、普通にまともな審議さえ行われれば、当然逆転するということで、専門家の方々の意見は一致しています。元最高裁判事で、わが国における行政法の第一人者である園部逸夫博士(今年も何度か行政に関する意見を求められて、国会で答弁しておられます)も、学問の自由を守るために、私達を全面的に支援して裁判所に意見書を提出されました。 今回、弁護団に新たに2名の強力な専門家が加わられました。 新井章先生(家永教科書裁判など、わが国における歴史的な、多くの大きな行政裁 判に携わって来られた第一人者の先生です)と、湯川二朗先生(行政に関しては、わが国でもトップクラスの弁護士で、10年ほど前から、弁護士と裁判官との兼任制度の必要性を説いてこられました。長い間東京におられましたが、現在は京都に移られ、実際にご自身、京都地裁の裁判官を兼任されています)。行政裁判に造詣が深く、正義感溢れる尾藤廣喜主任弁護士を中心に、熱血漢の神崎哲弁護士ともども、全員が一致団結して、大阪高裁での勝訴を疑うことなく邁進しておられます。わが国の行政裁判も、ようやく、社会正義が通用する時代を迎えつつあり、今回は、まさしくその範を示すべき裁判になるでしょう。 今回の阿部泰隆教授ご執筆著書のご一読と、今後の皆様方の更なるご支援のほどをなにとぞよろしくお願い申し上げます。
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