「東京都立大学廃止と新大学設立案」に関する声明


東京都知事・石原慎太郎殿
大学管理本部長・山口一久殿

                     東京都立大学大学院国語学専攻OB・OGの会有志
                                   平成16年1月7日
 2003年8月1日以降の新大学設立案は、あまりにも大きな問題点を抱えていると考えます。我々は、それに対して以下のような意見を表明したいと思います。

1.東京都立大学大学院国語学分野は、国文学専攻の一部として、開学以来50年に渡る伝統と歴史を有し、全国諸方言の研究、現代日本語の理論的・実証的研究、日本語史の研究など幅広い分野で今まで多数の人材を育て上げ、その多くは、国内外の大学や研究機関で研究者として活躍しています。今回の計画は、このような研究と教育の成果を踏みにじるものであると考えます。

2.新大学設立にともない、東京都立大学は廃止される計画です。しかし、新大学には、学部に文学科、そして国文学専攻がなく、大学院の構想は何も発表されていません。このままでは、大学院も国文学専攻は完全になくなるのではないか、それによって、新大学では国語学を学ぶ機会がなくなるのではないかと考えられます。

3.現在在籍している大学院生にとって、今考えられているような「東京都立大学の廃止」は、非常に大きなダメージになります。現在のスタッフがいて、各種施設がそのまま使えることを前提に現在の大学院に入ってきた人たちは、その前提が崩れてしまうことになりかねません。現在在籍している大学院生は、大学院修了・学位取得まで、きちんと継続した研究ができ、指導教官からの指導が受けられるのでしょうか。

4.大学院入試において、国語学分野は、毎年多数の応募者があります。そのようなきびしい入試に合格して入学した大学院生達は、大学院の課程のなかで、一層の教育・研究者としての知識・経験を積むよう勉学と研究に励んでいます。我々としても、全面的に後輩たちを支援したいと考えておりますし、また実際そのようにしてきました。東京都立大学の廃止にともない、国文学専攻がなくなってしまえば、このような我々の活動も期待もまったく無意味になります。

5.国語学をはじめとする言語研究は、言語そのものの研究とともに、言語を介した人々のコミュニケーションも視野に入っており、現代社会の諸問題に密接に結びつく研究分野です。このような社会的に有用な研究が、今回の計画により途絶することは、東京都立大学だけの問題ではなく、東京都、さらには日本全体にとって大きなマイナスになります。

6.国語学(日本語学)を学ぶ大学院生の中には、多数の留学生がいます。国語学分野の留学生は、日本、日本語、日本文化を学ぶために、はるばる東京都立大学までやってきた人たちです。これからの国際化社会を考えれば、留学生をもっと大事にするべきです。東京都立大学の留学生の多数は、国語学を学んでいます。(次に多いのは国文学です。)新大学で、国語学・国文学が学べないことは、留学生にとっては大きな打撃です。

7.新大学の構想に関して、トップダウン設計は、まったく新たに大学を設計するときには有効な面がありますが、今回の計画は、東京都立大学など4大学を廃止するとともに、その土地・建物・教員を活用して新大学を設計するものですから、完全に新しい大学を設計するわけにはいかず、今までの大学にも配慮した計画が求められます。今の大学管理本部のやり方は、大学側の意見を聞かず、密室の中で大学外の人間が中心になって計画を策定するというもので、これでは、あまりに一方的です。是非、東京都立大学など4大学の意見を聞き、十分な協議を積み重ねていただきたいと思います。

8.国語学を学ぶことができない新大学ですが、では、なぜそのような大学が考えられたのでしょうか。十分な実績があり、現在も学ぶ人が継続的におり、外部からの評価も高いセクションが、大学管理本部のいう「設置者権限」で廃止されることはとうてい納得できません。